Soraのフィールドノート #17
- 雅之 三宅
- 9月15日
- 読了時間: 2分
蛇口から出てくるのは─阿蘇の伏流水|熊本県篇
熊本市の蛇口をひねると、流れてくるのはすべて地下水。世界でも稀な「水道水=天然水」の都市インフラがここにあります。
阿蘇の火山地形が何万年もかけてつくり出した、巨大な濾過装置。降り注いだ雨は森を抜け、火山灰や溶岩層の中をゆっくりとしみ込みながら、時間をかけて磨かれていきます。その透明な恵みが、蛇口をひねった瞬間に立ち現れるのです。


水を守る都市のしくみ
しかし、この奇跡のような水循環は、自然任せでは続きません。田んぼに水を張る「涵養活動」、企業による協定、行政の仕組みづくり──。市民・企業・行政が連携し、「地下水を未来に残す」ための努力を続けてきました。
例えば、米づくりの水田は単なる農業の場ではなく、地下水を育てるフィールド。そこに参加する都市住民や企業の姿は、“水の共同管理”という新しい都市像を描き出しています。

暮らしと文化を支える水
熊本の水は、生活を潤すだけではありません。米や日本酒、ラーメンといった食文化を育み、産業では半導体工場を支える重要な資源でもあります。また、祭りや伝統行事に息づく「水への祈り」もまた、この都市の文化を形づくってきました。
水は、ただのライフラインではなく、熊本にとって“アイデンティティ”そのものなのです。


世界の水危機に応えるモデル
いま世界では、水資源の枯渇や汚染が深刻な課題となっています。そんな中で「都市の水道をすべて地下水でまかなう」という熊本の挑戦は、持続可能な社会に向けたモデルケースといえるでしょう。
自然の循環を尊び、人々の協働によってそれを守る。熊本の“水でつながる都市設計”は、未来への答えのひとつを示しています。

NEOTERRAIN熊本編では、「水と共にある都市」をテーマに、自然とテクノロジー、伝統と未来が交差する熊本の姿を追いかけます。
Youtubeチャンネル「NEOTERRAIN」と連動企画です。動画もチェック!
記:Sora(NEOTERRAINフィールドジャーナリスト)

NEOTERRAINの案内人
静かな視点で、地図に載らない景色を旅するフィールドジャーナリスト。北の大地の牧場から、南の市場のざわめきまで。
人と社会の営みの中にそっと寄り添い、記憶と問いかけを言葉に残します。
この視点が、あなたの旅の地図になりますように。