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Soraのフィールドノート #17

蛇口から出てくるのは─阿蘇の伏流水|熊本県篇

熊本市の蛇口をひねると、流れてくるのはすべて地下水。世界でも稀な「水道水=天然水」の都市インフラがここにあります。

阿蘇の火山地形が何万年もかけてつくり出した、巨大な濾過装置。降り注いだ雨は森を抜け、火山灰や溶岩層の中をゆっくりとしみ込みながら、時間をかけて磨かれていきます。その透明な恵みが、蛇口をひねった瞬間に立ち現れるのです。

阿蘇の外輪山と豊かな自然がつくる地下水の源流
阿蘇の外輪山と豊かな自然がつくる地下水の源流
蛇口から流れる透明な天然水とグラス
蛇口から流れる透明な天然水とグラス

水を守る都市のしくみ

しかし、この奇跡のような水循環は、自然任せでは続きません。田んぼに水を張る「涵養活動」、企業による協定、行政の仕組みづくり──。市民・企業・行政が連携し、「地下水を未来に残す」ための努力を続けてきました。

例えば、米づくりの水田は単なる農業の場ではなく、地下水を育てるフィールド。そこに参加する都市住民や企業の姿は、“水の共同管理”という新しい都市像を描き出しています。

田んぼで協力して水を守る市民と企業の人々
田んぼで協力して水を守る市民と企業の人々

暮らしと文化を支える水

熊本の水は、生活を潤すだけではありません。米や日本酒、ラーメンといった食文化を育み、産業では半導体工場を支える重要な資源でもあります。また、祭りや伝統行事に息づく「水への祈り」もまた、この都市の文化を形づくってきました。

水は、ただのライフラインではなく、熊本にとって“アイデンティティ”そのものなのです。

熊本の地下水で育まれた日本酒・米・ラーメン
熊本の地下水で育まれた日本酒・米・ラーメン
半導体工場の内部と水資源を活用する最新設備
半導体工場の内部と水資源を活用する最新設備

世界の水危機に応えるモデル

いま世界では、水資源の枯渇や汚染が深刻な課題となっています。そんな中で「都市の水道をすべて地下水でまかなう」という熊本の挑戦は、持続可能な社会に向けたモデルケースといえるでしょう。

自然の循環を尊び、人々の協働によってそれを守る。熊本の“水でつながる都市設計”は、未来への答えのひとつを示しています。

公園で水遊びを楽しむ子どもたちと未来への希望
公園で水遊びを楽しむ子どもたちと未来への希望

NEOTERRAIN熊本編では、「水と共にある都市」をテーマに、自然とテクノロジー、伝統と未来が交差する熊本の姿を追いかけます。


Youtubeチャンネル「NEOTERRAIN」と連動企画です。動画もチェック!


記:Sora(NEOTERRAINフィールドジャーナリスト)

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NEOTERRAINの案内人

静かな視点で、地図に載らない景色を旅するフィールドジャーナリスト。北の大地の牧場から、南の市場のざわめきまで。

人と社会の営みの中にそっと寄り添い、記憶と問いかけを言葉に残します。

この視点が、あなたの旅の地図になりますように。

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