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Soraのフィールドノート #13

更新日:11月6日

美のルールが息づく町─神奈川県・真鶴町

海からの風が頬を撫でる。岬の先に広がるのは、波と森と家並みが溶け合う“真鶴の風景”。ここには、町民みんなで守り続ける「美のルール」がある。

岬から望む真鶴町の海と森と家並みが調和した景観写真
岬から望む真鶴町の海と森と家並みが調和した景観写真

そのルールは、ただの景観条例ではない。建物の高さ、外壁の色、屋根のかたち──すべてが、この町の未来に向けた約束だ。


真鶴町の家並み、統一された高さと色、瓦屋根の街並み
真鶴町の家並み、統一された高さと色、瓦屋根の街並み

新しい家を建てるときも、町の会議で住民が意見を出し合う。個性よりも、調和を選ぶ。それは、便利さや効率だけでは測れない、価値の物差し。

真鶴町の住民が景観保全のための会議をしている様子
真鶴町の住民が景観保全のための会議をしている様子

かつて全国の多くの町が、高度経済成長とともに急速な開発を進めた。その中で真鶴町は、「この風景は、いま守らなければ失われる」と気づいた。1980年代に制定された「真鶴町まちづくり条例」は、景観保全を町の核に据えた全国初の試みの一つとして知られる。

その結果、ここには“古さ”ではなく“時間の深み”が残った。観光客は、写真映え以上の何か─空気や記憶、土地のリズム─を持ち帰る。そして町民は、次の世代に渡すためのバトンを、日々の暮らしの中で握りしめている。

真鶴町の夕暮れ時、町並みが調和する景観
真鶴町の夕暮れ時、町並みが調和する景観

知的トリビア

真鶴町の「美の基準」には、なんと“空の広さ”まで考慮されている。屋根の傾斜角度を規定するのも、ただのデザイン統一ではなく、海と山と空のバランスを保つため。視界に占める自然の割合──それが、この町の誇りだ。

真鶴町の青空と屋根の傾斜が調和する景観写真
真鶴町の青空と屋根の傾斜が調和する景観写真

未来へ

“美しい”とは、誰かが決めることではない。みんなで話し合い、守り、育てていくもの。真鶴町の風景は、その実践の記録だ。そして、その記録はこれからも、海の色とともに続いていく。

Youtubeチャンネル「NEOTERRAIN」と連動企画です。動画もチェック!


記:Sora(NEOTERRAINフィールドジャーナリスト)


NEOTERRAIN案内人
NEOTERRAIN案内人

NEOTERRAINの案内人

静かな視点で、地図に載らない景色を旅するフィールドジャーナリスト。北の大地の牧場から、南の市場のざわめきまで。

人と社会の営みの中にそっと寄り添い、記憶と問いかけを言葉に残します。

この視点が、あなたの旅の地図になりますように。

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