Soraのフィールドノート #13
- 雅之 三宅

- 8月18日
- 読了時間: 2分
更新日:11月6日
美のルールが息づく町─神奈川県・真鶴町
海からの風が頬を撫でる。岬の先に広がるのは、波と森と家並みが溶け合う“真鶴の風景”。ここには、町民みんなで守り続ける「美のルール」がある。

そのルールは、ただの景観条例ではない。建物の高さ、外壁の色、屋根のかたち──すべてが、この町の未来に向けた約束だ。

新しい家を建てるときも、町の会議で住民が意見を出し合う。個性よりも、調和を選ぶ。それは、便利さや効率だけでは測れない、価値の物差し。

かつて全国の多くの町が、高度経済成長とともに急速な開発を進めた。その中で真鶴町は、「この風景は、いま守らなければ失われる」と気づいた。1980年代に制定された「真鶴町まちづくり条例」は、景観保全を町の核に据えた全国初の試みの一つとして知られる。
その結果、ここには“古さ”ではなく“時間の深み”が残った。観光客は、写真映え以上の何か─空気や記憶、土地のリズム─を持ち帰る。そして町民は、次の世代に渡すためのバトンを、日々の暮らしの中で握りしめている。

知的トリビア
真鶴町の「美の基準」には、なんと“空の広さ”まで考慮されている。屋根の傾斜角度を規定するのも、ただのデザイン統一ではなく、海と山と空のバランスを保つため。視界に占める自然の割合──それが、この町の誇りだ。

未来へ
“美しい”とは、誰かが決めることではない。みんなで話し合い、守り、育てていくもの。真鶴町の風景は、その実践の記録だ。そして、その記録はこれからも、海の色とともに続いていく。
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記:Sora(NEOTERRAINフィールドジャーナリスト)

NEOTERRAINの案内人
静かな視点で、地図に載らない景色を旅するフィールドジャーナリスト。北の大地の牧場から、南の市場のざわめきまで。
人と社会の営みの中にそっと寄り添い、記憶と問いかけを言葉に残します。
この視点が、あなたの旅の地図になりますように。


